Sunday, Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday, Saturday, 11-15-2006
この前(昨日書いた文章)、ちらっとJTの主張を見てみた。疫学研究では因果関係は証明できない、とか受動喫煙と疾病発生率の上昇との統計的関連性は立証されていない、とか言っている。
喫煙も受動喫煙も多くの重病の原因であるというフィリップモリスの言っていることとかなり食い違いがある。
JTによると、2003年にブリティッシュ・メディカル・ジャーナル (BMJ) に、「環境中たばこ煙への曝露と虚血性心疾患および肺がんとの関連性は、一般的に考えられているものよりかなり弱いと思われる」と結論づけている研究が発表された、というのを、彼らの主張の理由にしている。
確かにこの論文は実在する。
●Enstrom and Kabat, "Environmental tobacco smoke and tobacco related mortality in a prospective study of Californians, 1960-98." BMJ 2003 だ。
でももちろん、受動喫煙と疾病発生率の上昇が結論付けられた研究もある。たくさんある。
ごく最近のBMJ だけでも、
●Wen et al. "Environmental tobacco smoke and mortality in Chinese women who have never smoked: prospective cohort study." BMJ 2006.
●Vineis et al. "Environmental tobacco smoke and risk of respiratory cancer and chronic obstructive pulmonary disease in former smokers and never smokers in the EPIC prospective study." BMJ 2005
●McGhee et al. "Mortality associated with passive smoking in Hong Kong." BMJ 2005
まだまだリストは続く。続く。いぃっぱいある。
さらにJTが受動喫煙は危険とは言えない、の主張に使っているもともとの Enstrom and Kabat の論文はかなり危うい状況に立たされている。もともと、この2人とも、研究資金をタバコ業界から得ていた。
研究、データ、解析の質についても問題点はかなりあるようだ。この論文を(データ、解析手法の質の低さ、解釈の誤りの観点から)取り消した方が良い、という意見も BMJ で発表されている。ま、要するに、この Enstrom and Kabat の論文は全体から見ると、「受動喫煙は危険ではない」という結論を出している超少数派のうちのひとつ、ということだ。
JTはその超少数派だけを自らの主張に取り入れて、あの医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルで、発表されているんだよ!と言っている。他の大多数の研究についてはどうなのさ?みなさんにお知らせしなくていいの?