Sunday, Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday, Saturday, 01-10-2008
始めに : Death Valley(死の谷)に行ってからちょうど10年になる.この旅では,僕の心に深く刻まれることが多くあったので,今でもその時見た風景などを鮮明に思い出せる.だから10年という非常に長い時間が経ったのが信じられない.これは,その旅の第1日目の話.
その1 なぜ砂漠を目指したのか死の谷と呼ばれる砂漠
1998年1月,死の谷 Death Valley を訪れた.大学4年の冬休み,卒業が近づいていたけれどその後の予定は未定,という少し精神的に不安定な時期だった.大学院に進学しよう,と冬休みの少し前にやっと決めたけれど,願書を提出するなど具体的な準備は全く出来ていなかった.
その不確かな未来がもたらす憂うつさに,さらに拍車をかけていたのが「エルニーニョ」だ.その耳慣れない言葉が何を意味するのは知らなかったけれど,その冬のバークレーは雨が多かった.雨が嫌いな僕は,来る日も来る日も雨の冬休みをすっきりしない気分で過ごしていた.
1月6日の朝もその前日と同じように,しとしとと雨が降っていた.ベッドの上で雨の音を聞きながら「アリゾナの砂漠に行こう」と決めた.砂漠ならこの雨から逃れられるだろう.簡潔だけど説得力のある意見だ.すぐに出発することにした.目的は砂漠でサボテンを見ること.
旅の準備は簡単だった.2泊3日分の着替え.全米のユースホステルのガイドブック.運転中に聴くためのカセットテープ.それ以外に持っていく物は思いつかなかった.持って行かないと決めた物がひとつあった.傘だ.愛車ターセルの中に常備していた傘を,この旅に出る前に降ろした.傘のいらない場所へ行きたかった.