Sunday, Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday, Saturday, 08-16-2006
『で、今年のイチローはどうなのさ?』
という質問をされたとする。
『調子いいんじゃない?』
で終わってもいいんだけど、データがあるのでもう少し詳しくみてみないと気がすまない。職業病?ま、別に病気じゃないか。
野球にも統計学にも興味の無い人は読み進まない方が無難かも。
イチローの成績を評価するにはいろいろあるけど、とりあえずヒット数を見てみよう。おととし大リーグ記録を樹立したのもヒットの数だしね。その新記録を出したおととしのイチローと比べよう。
データは例のごとく ESPN のページから。きれいにして、打数、安打数、年、だけにしたデータは ここ においておくので興味のある方は解析して下さい。
イチローの今年のヒットの数はどうだろう?
何かの数を数えたデータはポワソン分布で表せるね。という訳で、まず 2004年の毎試合のヒットの数をポワソン分布を使って表してみよう。1試合のヒットの数の平均をλとすると、1試合にヒットを x 本打つ確率はで表される。
2004年にイチローは 162試合で 262本ヒットを打ったので、1試合あたりの平均は 1.617。それを使って、1試合にヒットを x 本打つ確率を計算してみた。
1試合のヒットの数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 以上 |
確率 | 19.8% | 32.1% | 26.0% | 14.0% | 5.7% | 2.4% |
でもこれではいまいち判りにくいので、実際にヒットを0本、1本、2本・・・打った試合の数と、このポワソン分布による試合数の期待値を比べてみる。全部で162試合だから、そのうち 19.8% の32試合でヒット0本になると予想される。
1試合のヒットの数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 以上 |
実際 | 28 | 54 | 46 | 24 | 6 | 4 |
期待値 | 32.1 | 52.0 | 42.0 | 22.7 | 9.2 | 4.0 |
棒グラフにして見てみる。思っていたよりきれいにフィットしたなぁ。適合度検定の p値は .83。
同じく2005年と2006年のイチロー。この期待値は2004年のヒット数を元に計算されている。つまり、試合数が同じだからグラフの水色の部分は毎年同じ。やっぱり2005年は調子悪かったようだ。1本しかヒットを打たなかった試合がかなり多い。適合度検定の p値は .0089。2004年と比べたら成績は悪い。
2006年のここまでの成績は2004年と比べてさほど違いはない。p値は .30。少なくとも統計学的に見てびっくりするような違いではない。1試合5安打以上の試合がないのがちょっと気にかかるけど。
イチローが最後に1試合に5本ヒットを打ったのは2004年の9月21日だ。そろそろ2年になる。
という訳で、ここまでの今年のイチローのヒットの数は、大リーグ記録を塗り替えた2004年に比べて、さほど違わないようだ。
とは言えなくて、「今年のイチローのヒットの数は、大リーグ記録を塗り替えた2004年に比べて劣る、と言うだけの充分な証拠はない。」
劣らない、とは言ってないよ。
実は、だめだった2005年と比べて勝る、と言うだけの充分な証拠もない。結局いいんだか悪いんだか、判らないな、これじゃ。
コメント
これ、イチロー以外の選手だったらもっと荒れるんでしょうね。
もっともそういう場合、調子がいいか悪いかは大体わかるでしょうけれども。
確か2005年は本塁打が多かったですよね。
塁と率の関係で、どっちを狙った方が得なのかな?
普通に考えればやはりイチロー選手は率を追及するべきなんだろうけれども・・・
結構誰でもきれいにフィットするのですが、ヒットが3本以上のところで、たいていずれが出ます。
ポワソンモデルだと、平均が1くらいでも、5%くらいの確率でヒット3本を要求するので。
その点、イチローはヒット3本なんてお茶の子さいさいさいなので、他の人よりきれいにフィットすることになります。
レッドソックスのラミレスでもやってみましたが、まぁまぁのフィットでした。
イチローは塁に出ることを売りにしているので、やっぱりそこを追求していくほうがスタイルにあっていますね。その割に四球が少ない、と批判されますが・・・