Sunday, Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday, Saturday, 10-03-2005
誕生の話1:陣痛
誕生の話2:麻酔
誕生の話3:プッシュ
誕生の話4:誕生!
誕生の話5:泰河
分娩室に入るとすぐに看護婦さんが検査に来た.registered nurseというランクのちょっと医者よりの看護婦さんだ.胎児の心拍数と陣痛の強さをモニターするようにセンサーをつけた.この時点で子宮口は 3cm開いていた.その看護婦さんによると,このままここにいるか,家に帰ってもう少し様子を見るかはノーマン先生が決めるけど,陣痛もかなり規則的に来ているからこのままここにいることになると思うよ,ということだった.
どうやら帰されることがなさそうだったので,車に置いてきたお泊りセットを取りに行くことにした.その時,ER を通らずに普通のルートで駐車場まで行けることを看護婦さんから聞いた.日曜日でも夜の9時半までは ER を通る必要はなかったのだ.
荷物を取ってきてからは写真やビデオを撮ったりして時間をつぶした.陣痛はかなり規則的に来るようになっていた.陣痛の大きさが数値になってモニタに出るので,その数値が上がり始めると「来るよ来るよ」とふたりで覚悟を決めることが出来るようになった.僕は横から見ているだけなのでで「どうやら30を超えるとかなり痛いみたいだなぁ」と観察していた.習った呼吸法を使うまでもなく,じっとこらえてやり過ごせる程度の痛みだった.
しばらくして当直のノーマン先生が登場した.ちょうど難産に立ち会っていたようで,かなり遅れての登場だ.でもそれまでは看護婦さんたちがちゃんとお世話してくれていた.ノーマン先生は内診をして「もう少しねぇ」という感じで去っていった.まだ長く待つことになるようだ.
病院に着いたのが8時頃で,その後2時間ほど経った頃になると陣痛もかなりひどくなってきた.モニタの数字も50から60ほどに上がるようにっていた.ちょうどその頃,硬膜外麻酔 (epidural) の説明に神経科の医者が来た.以前から出産にエピデュラルを使うことを伝えていたので,時間を見計らってやってきたようだ.すごく若く見えるその医者が麻酔についての詳しい説明して,まりが何枚かの書類にサインした.サインしている途中で陣痛が来たので,少し時間がかかった.麻酔がしたくなったら呼んで下さい,と言い残して彼は去って行った.
すぐ入れ替わりで看護婦さんが来て,また子宮口の開き具合を図ると,そろそろ 4cmということだった.そこで,神経科の医者が去ってすぐだったけれど,すぐに麻酔の準備を始めるように頼んだ.少し前に出産した友達に「麻酔をかけるのを遅らせようとがまんしても何もいいことないよぉ」と聞いていたので,早い段階から麻酔をかける心の準備をしていた.ただ、準備に20分ほどかかるので,それまでは痛みに耐えなくてはいけない.
先ほどの若い医者が戻ってきて,いろいろ準備をしている間に年配の貫禄たっぷりの医者が入ってきた.彼はまりの名前を見て,日本人ですか?と訊いた.そうだ,と答えると,顔の前で両手を合わせて何か挨拶をした.どうやらちょっと勘違いしているようだった.もしかしたら,お祈り?
若い方の医者がアシスタントで(医者かどうかも定かではなかった)年配の医者が実際に麻酔をかけるのだと思ったけれど,結局若い方の医者が最初から最後まで作業をして,年配の医者はその間ずっと何かの書類に目を通したり,メモをとったりしていた.
硬膜外麻酔の細い管を背中から挿入する辺りに,まず小さい針で麻酔をかける.その細い管を背中から挿入するのを一度失敗した.若者の医者は「まただよぉ,今日は変だなぁ」と独り言を言っていたので,調子の悪い日だったようだ.
その小手術の間も陣痛は容赦なくやってきたのだけど,まりは動くこともできないので,ひたすら我慢.硬膜外麻酔の準備が完了したのは午後11時半だった.まりによると,黄色い液体が背中から入るようになると,とたんに痛みを感じなくなった,とのことだった.常に一定のペースで麻酔は注入されるのだけど,特に痛みがひどくなった時にちょっとペースをあげることもできるようになっていた.
これで陣痛も去って一段落だ.「いきみ始めるにはまだもう少し時間があるから眠りなさい」と言われたので、まりはベッドで、僕は伸ばすとベッドになるソファで眠った.