Sunday, Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday, Saturday, 10-03-2005
誕生の話1:陣痛
誕生の話2:麻酔
誕生の話3:プッシュ
誕生の話4:誕生!
誕生の話5:泰河
名前はずっと前に決めていた.性別が判明する前は,なんとなく女の子だろうと思っていたので,おなかの中に向かって女の子の名前で呼びかけていた.男の子というのが判明したので,呼びかけられなくなり,その時すぐに決まった.アメリカで暮らしていくので,英語でも呼びやすい名前というのが条件の一つだ.そこで泰河(たいが)と名づけた.単語の最後の R の発音をはしょるイギリス人が tiger と言うのと同じ発音だ.
以前,同僚と「僕に何かふさわしいニックネームはないだろうか?」という話をしていた時,僕のイニシャルは T だし寅年生まれだから「タイガー」はどうだろうか?と冗談で言ったところ「お前はタイガーと呼べるほどクールではない」 (You're not cool enough to pull off "Tiger.") と言われた.せめて息子にはクールになってもらおう,と思う.
それはさておき,出産直後の話に戻る.
一通り泰河が拭かれてきれいになると,部屋の中で健康チェックが行われた.泰河は熱が38度もあったので,別室に連れて行かれそうになったけれど,ノーマン先生が「赤ちゃんはお母さんの熱を受け継いだだけ.心配することは何もない」と言ってくれたので,心配しないことにした.新生児室に連れて行くのももう少し待っても良い,ということだった.
出産用の部屋から休憩用(入院用)の部屋に移る時に,泰河が新生児室に連れて行かれた.でもまりも僕も新生児室への出入りは自由で,まりはまだベッドから動けなかったけれど,僕は部屋の移動が済むと早速新生児室に向かった.
泰河はまだ体温が少し高めだったけれど,それ以外は何も問題はなかった.顔に傷がたくさんあって,白目が充血していたけれど,これは産道を通ってきたのだから当たり前のことで何も心配はない,とのことだった.身長も体重も日本人の赤ちゃんとしては平均的だったけれど,アメリカンサイズの赤ちゃんたちに囲まれて,泰河がとても小さく見えた.
出産は朝だったけれど,それまで徹夜だったのでまりも僕も一眠りすることにした.出産直後は気分が高揚していて,なかなか眠れないけれど,この後ゆっくり出来る時間はどんどん減ってくるから今寝ておいた方が良いと言われた.授乳の時間になったら泰河を連れてくる,とのことだった.
日本とアメリカで違うことは山ほどあるようだけど,アメリカでは生まれてすぐ授乳を試みる.日本の本では最初の2日ほどはまだ母乳が出ない,というようなことが書いてあったけれど,産後一時間で最初の授乳,と聞いていた.実際はもう少し時間が空いたけれど,その日のお昼には既に最初の授乳にチャレンジだった.まりも泰河も生まれて初めてのことでなかなかうまくいかなかった.授乳の指導を専門にする看護婦さんが何人もいて,そのうちの一人の看護婦さんの指導のもとでかなり長くがんばったけれど,やっぱり難しかった.しかし,生まれて2,3日は何も飲まなくても大丈夫だから,ということで気長にチャレンジを続けることにした.
日本では生まれてすぐの赤ちゃんは新生児室にいて,両親は別室ということが多いようだけど,ここでは,すぐに同じ部屋に連れてきてくれる.新生児室に預けることもできるけれど,両親のうち一人が起きていれば,ずっと同じ部屋に赤ちゃんもいていいことになっていた.まりはまだ麻酔が少し効いていて,ベッドから起き上がれないので,僕が最初のおむつを変えた.
この後麻酔が少しずつ切れて、まりは様々な種の痛みに襲われることになる・・・