Sunday, Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday, Saturday, 09-09-2010
来週 School for Science and Math というところで,一時間の講義をすることになった.これがどういうところか,よく判っていないのだけど,どうやら理数系に秀でた高校生が,週一でヴァンダービルトで科学と数学に関する授業を受けるようだ.
しかも相手は高校生一年生ということらしい.日本では中学生だ.この間,19歳の人たち相手に 授業をした けれど,今回はもっと若い.
高校生相手に何をしゃべればいいんだ?でも,担当の先生からあまり細かな指示が無いことをいいことに,勝手にいろいろ話してしまおう.
その準備の一環で,ここ に書いた平均への回帰をもう一度見てみた.
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メジャーリーグのシーズン開幕はだいたい4月の始めだ.1ヶ月経ったところで,50人の選手を選んで,25人ずつのふたつのグループに分けた.グループ1には,一日だけ秘密の特訓を行った.グループ2には「ホメオトシー」というひたすら誉めまくって自信をつけさせる,という最近はやりの治療を施した.
下のグラフは 5月の打率 - 4月の打率 を現している.0 より下は打率が下がったということだ.秘密の特訓グループの多くの選手が打率を下げたのに大して,ホメオトシーグループの選手はほぼ全員が打率をあげた.中には 0.2 もあげた選手もいる.つまり4月には1割5分だったのが,5月は3割5分だった,ということだ.
ホメオトシー,すごいな.
... ... ...
実は全くすごくない.
実は,無作為に選んだ50人ではなくて,秘密の特訓グループは4月の打率が高かった25人で,ホメオトシーグループは4月の打率が低かった25人だ.だから,特に何もしなくても,5月の打率は特訓グループでは下がる傾向があるし,ホメオトシーグループでは上がる傾向にある.
特筆するようなこと,というのは長くは続かない.高い値は平均値に向かって落ちてくる傾向があるし,低い値は平均値に向かって上がって行く傾向がある.
それだけ.
でも,気がつかずにいろんなところでだまされているかもしれない.ホメオトシーにもだまされてはいけない.
コメント
今話題のホメオ・パ・シーはそう言うからくりなんですね。
勉強になります。
私も病態を作って薬剤投与前に群分けしますが、病態作る前のデータもケアすべしってことですかね?
ホメオトシーもそうですが、メオトシーはどうですか?メオトになる時も結婚前に愛情が高い群と低い群では、高い群の方が愛情が冷めたってことになりやすいのでは?
私にはわかりませんが。
いや,ホメオ・パ・シーがこういうからくりと言っている訳ではありません.うさんくさいことは事実ですが.大きな目で見て(例外的な個々の例を無視して)全く効果がないこともたぶん事実ですが.
薬剤投与前の群分けを無作為(ランダム)にすることが大切です.上記の野球の例えでも,無作為に選んだ25人vs無作為に選んだ25人では,差はでません.
さて,メオトシーですが...
愛情が高い群と低い群を選んだ時点と,その後のデータを集めた時点で,「(実験の対照となる)全カップルでの「愛情度」の平均が同じ」という仮定ができれば,また,途中で脱落するカップル(離婚)がいないと仮定できれば,たぶん,愛情が高かった群の平均「愛情度」は下がり,低かった群の平均「愛情度」はあがります.
一つ目の仮定が大切です.
そもそも回帰分析の「回帰」という言葉は・・・
長くなるのでやめます.